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声楽・ベルカント唱法のQ&A

声楽・ベルカント唱法のQ&A

ベルカント唱法とは

 

ベルカント唱法ってどんな発声法なんですか?

ベルカント唱法を一言で言うならば、【身体のエネルギーではなく、バランスで歌う唱法】と言えます。喉に無理なく自然な呼吸法と横隔膜の働きによって、低音から高音まで輝かしい響の声を出せます。身体の小さいイタリア人や日本人に最も適した発声法です。小さい身体で、効率よく最大限の音量を(遠くまで響く声)が出せて、身体の大きい音量もあるゲルマン人に負けないように、イタリア人が何年もかけて守ってきたものです。ドイツの発声法のように筋力で支えて声を出すのではなく、身体全体のバランスで支えて発声するので、年を取っても、いつまでも若々しい声で歌う事が出来ます。例えばフレーニーやパバロッティのように。

私は息が短く、息継ぎがあまりない曲などはどうしても息が続きません。肺活量を鍛えるのは限界があると思うのですが・・・

まず息を長く保つためには、声の響きを無駄使いしないことです。息漏れしたり、擦れた声を出さないことです。喉のポジション(位置)を低く。{声のトーンを低くということではありません。} 腑に降りた声を出します。(俗に言う、喉の上がった声の反対です。)そして喉に響かせるのではなく、鼻の後ろの鼻腔に母音を響かせます。(ちょっとNHKのアナウンサーみたいな声です。)そうすると程よく声帯が閉ってくれて、息が漏れません。
次はお腹(横隔膜)の使い方です。だいたい息が短く、続かない人は肺活量が少ないのではなく、入った空気を効率よく使っていないだけです。肺活量は普通の大人であれば、たいして変わりません。それと歌を歌うために一番の基本で重要な腹式呼吸(横隔膜呼吸)が出来ず、胸式呼吸になってしまっている場合が多いようです。腹式呼吸ですが、良く分からなければ、まず仰向けに寝てください。静かにしばらくじっとしていると、お腹が上下しているのに気がつくでしょう。息をはく時にへっこみ、吸う時に膨らんでいるでしょう。この上下の距離が自分の息を使える量です。この距離を一回も止まったり、戻ったりしないで、声を出している間、フレーズの長さに合わせてゆっくりと、動かし続けるのです。お腹を硬く固めるなんて事をしたら、(日本人の発声を教える人はほとんどこう言いますが。)息が出なくて、短くなるいっぽうです。下腹の筋肉で横隔膜を押し上げていき、肺に入っている空気を最後まで使うこと、これが重要です。多分あなたは最初からか、途中からか、お腹が硬くなり息が残っているにもかかわらず、出なくなるのだと思います。とにかく、この腹を上下する距離を長くする練習をしてみてください。

私はソプラノですが、高いソまではなんとか、安定した声が出るのですが、それ以上はそれまでの声質と全く違う音がでてしまいます。また歌詞をはっきり発音しようとするとレガートで歌えません。どうすればよいでしょうか。

あなたの場合ソのあたりがパッサージョだと思います。その上がアクートですが、うまくパッサージョが通過していないのが声質の違う声になってしまう原因だと思います。
ファ♯あたりから顎の力を抜いて、充分顎を降ろして、軟口蓋が良く開くようにします。ちょうど欠伸をする要領です。そしてソから上の音は頬骨を高くして開放します。そうすれば音が痩せずにアクートになり同じ声質の声になります。 声を出す時にお腹を止めていませんか?それが支えだと思っていませんか?ベルカント唱法では横隔膜を止めてはいけません。息を吐き出す時(=声を出す時)には横隔膜を動かして使うのです。そうすればレガートに歌えます。イタリア語は母音を長く発音し、子音にかける時間を短くします。あまりハキハキと発音しない方が良いのです。ちょとナポリ人のように力を抜いて発音した方が、母音がつながりレガートになります。ほとんどの人がドイツの発声法でイタリア歌曲やイタリアオペラを歌っているのです。だから高い音が出にくいとか、レガートで歌えないとか、声が揺れるとかの問題が出てくるのです。

支えについてですが、声を出す時、下腹は、上へ引き上げる感じで、腰はずーんと重たく感じるような風でいいのでしょうか?中心に押そうと思うと、体全部があがってしまって支えられないような気がするんですが・・・

「中心に押そうと思うと、体全部があがってしまって」とありますが、身体や肩が上がらないように腰でサポートしていくのが、ベルカント唱法の【ささえ】です。外から見たら身体は下腹以外、何も動いていません。音が高くても低くても身体の使い方は同じです。そしてブレスをする度に(下腹を戻す度に)、身体の力を抜いていくのです。支えとは歌いだしの最初の音から100%あるのではなくフレーズの終わりに向かって徐々に重くなっていくものなのです。ドイツの発声法のように前面では支えないので、上半身に力が入らず自然な発声が出来ます。またオペラなどの演技も自由に自然に出来ます。

オペラのアリアを歌ってみたいのですが、最初は歌曲などから勉強した方がよいでしょうか?またアリアはやはりモーツァルトあたりからが無難でしょうか?

もちろんイタリアの歌曲からでも勉強を始めるのはいいと思いますがオペラからでも何の問題もありません。日本人はオペラのアリアというと難しいとか高い音が出ないとか思いがちですが、ちなみにイタリア人が歌を勉強し始める時、ほぼアリアから入っていきます。高い音が一個や二個出なくても、かまわず勉強します。歌曲より遥かに、声を出す道筋が多く含まれているからです。高い音が出ないからといって、出さなければいつまでも出ないでしょ。声はスポーツと一緒で、筋肉の運動です。挑戦しなければ得られないのです。
さてモーツァルトですが、ほとんどの日本人はモーツァルトのアリアからやらされています。私も学生の頃モーツァルトは基本だと教えられ、そう信じていました。始めに歌ったアリアはやはりモーツァルトでした。高い音が出ないのでヴェルディなど雲の上の存在でした。しかしこれが間違いだと気が付いたのが、イタリアに留学してからです。
まず、イタリア人はモーツァルトは若い頃、勉強しません。人によっては、一生歌わない人もいます。(私のマエストロはモーツァルトが大嫌いでした。以下の理由で)
1.音型がドイツ的でイタリアベルカント唱法では歌いづらい。
(たとえテキストがイタリア語であっても。)
2.歌のパートは器楽的。ブレスのことを考えて作曲されていない。
3.パッサージョ・アクートが確立していない。
4.一つの音譜に言葉が多すぎる。
5.言葉(イタリア語に関して)のイントネーションで音の高低が表現されていない。

モーツァルトはもちろん大天才ですから、その音楽は素晴らしいのですが、声楽を学び始めた者には、実は荷が重いのです。反対にヴェルディやプッチーニは声の事を知り尽くし、いかに歌手にとって声帯に負担が軽く、かつ効果的に聞こえるか、というように音型を作ってくれたのです。やはりベルカント唱法を学ばれるのでしたら、イタリアの作曲家のものからがいいでしょう。例えばドニゼティ、ベッリーニなどから始められるといいと思います。

私の声はちょっと暗めで重いので、ファぐらいから苦しくて、その上の音は出ない事はないのですが、痩せた音になってしまいます。メゾソプラノ(バリトン)なのでしょうか?自分としてはソプラノ(テノール)の曲が好きなのですけど・・

まず声種を決める条件は何だと思いますか?高い音が出るからソプラノやテノール?高い音が出ないからメッツォソプラノやバリトン・バス?明るい声だからソプラノやテノール?暗くてこもってるからメッツォソプラノやバリトン・バス?日本人の声楽の指導者はよくこんな条件で声種を分けます。しかし全てNO!です。
その本人のパッサーッジョの位置で決めるのです。イタリアの良い先生は、まず生徒のパッサーッジョがどこにあるか探す事から始めます。高い音が出る出ないに関係なく、ファやファ♯ぐらいにあればソプラノ・テノール。ミ♭やミぐらいにあればメッツォソプラノ・バリトンといったように決めます。そしてうまくパッサーッジョがパッサーレ(通過)するようになったら自然とアクート(高音)が出るようになるのです。
「あなたはソプラノ(テノール)だからこの音でチェンジしなさい」よく日本では聞くセリフです。まったく逆の事です。「この音がパッサーッジョだからあなたはソプラノ(テノール)なんです。」ましてチェンジとは変える事ですね。パッサーッジョをパッサーレすると言う事は、変えないようにする事なのです。
音色については暗く深い響のソプラノレッジェーロもいますし(例えばデヴィーア)、明るく軽い響のバッソ(例えばシエピ)もいます。音色は誰かの真似をしたり、創られたものではいけません。その人の持っている自然なものが出ていれば、声に色があると言います。それで声種を決める事はしません。
さてあなたの場合ですが、ファぐらいから苦しいと言う事はパッサーッジョがファにありそうです。即ちソプラノ(テノーレ)です。それも日本ではほとんどいない貴重なソプラノ(テノーレ)リリコでしょう。ソプラノ(テノーレ)であるのに高音が出しにくいのは、日本人がほとんど持っているネック、顎が硬いせいではないかと思います。ファ、ファ♯を欠伸する時と同じくらい顎を降ろして開けてみてください。特にア、エ、オの母音の時に。よく鏡を見ながら。そうすればソから上の音が痩せずにアクートに入っていくと思います。

初めまして。私は高音は3点ドまで出せるのですが、低音が非常に出すのがつらくて1点ドまでいくと声にもう艶がなくなってしまいます。もともと低音の歌手が高音」を得ること可能だが、逆は難しいと聞きました。
将来はミュージカル俳優を目指しているので1点ドが限界厳しいのです。これ以上低音を伸ばす事は不可能でしょうか。ちなみに私は20歳、身長181センチです。

ご質問の件ですが、3点ドまで出せると言うのは素晴らしい事だと思います。
もしオペラ歌手を目指していらっしゃるのでしたら、1点ドに艶がなくても、何にも問題はありません。ほとんど出てきませんから。ミュージカル俳優と言うとそういう訳にはいかないのでしょうね。
「低音の歌手が高音を得ること可能だが、逆は難しいと聞きました。」
もちろん、これは良く言われています。しかしあなたは身長181センチありますね。例外はありますが、身長と声帯の長さは比例しています。声帯が長いと言う事は低い声が出ると言う事です。
ちなみに私は183センチですが3点シから1点ドのもう1オクターブ下のドまで出ます。
もちろん全部を曲で使う訳ではありませんが・・・
そうするとあなたの声は生まれつき低音を持っている事になります。何が原因で低音の艶がないかという事ですが、もちろん声ばかりは実際に聞いてみないと分かりませんが低音は力が抜けて、喉が開いていないと響かないのです。要するに、出そう出そうと思って、頑張って響かそうと思うと、よけいに出なくなるのです。
リラックスして身体の力を抜いて、例えば、朝起きてすぐ、高音を出す前に、低い声を歌うのだと思わずに、出してみてください。身体的なサイドから見て、あなたは低音も伸びていくはずだと思います。

はじめまして。現在27歳の会社員なのですが、これからオペラ歌手を目指すのは難しいでしょうか?もし目指すとしたらやはり音大にいかなくてはならないでしょうか?

私は一年前からピアノを始めているのですが、音楽に関する知識は全くないです。

同じような質問を音楽大学受験編にも頂いていますが、
オペラ歌手になるのに年齢制限や、音大を卒業していなければいけないという条件は、なにもありません。
もちろん音大へ行くのが近道ですから皆さんそこを目指すのですが、素質と努力があれば、音大に行かなくてもオペラ歌手になれる可能性はあります。実際に先日のオペラでは、テノールの北野さんはオーディションにみごと合格して、ネモリーノの役を私と共演し、素晴らしい演奏を披露されていました。
彼は音大を出ていませんが、会社員として仕事を音楽以外に持ちながら、長年勉強を重ね、オペラ歌手として今回大きな舞台にデビューしたわけです。彼の年をはっきり書くと、怒られそうなので、あなたよりも10歳ぐらい上としておきましょう。とにかく歌を愛し、努力を惜しまず、歌う事を続けていけば、いつか花開く事になると思います。

私は米国に31年前から在住しているものです。日本の大学ではグリークラブで歌っていました。ここ数年前からこちらの大学の先生などについて声楽を習っています。

音域はテナーですが、Aより上の音域になると割れてしまったり不安定になり困っています。先生には息の支え(breath support)が足りないからだといわれていますが、どうしたら支えが十分になるのかその方法が分からず困惑しています。今横隔膜で歌おうと努力しているところです。取り組んでいるのは、最初はシューベルトの歌曲類でしたが、今ではもっぱらオペラのアリアやオラトリオなどに取り組んでいます。声の質はレジェロです。「ベルカント唱法では横隔膜の後ろの面(腰)を徐々に下げて支えます。」とかかれていますが、今一つ分かりません。何か練習方法の形でもう一度説明していただけませんか?

同じ質問が大変多いので、こちらで一括してお答えします。ベルカント唱法では、下腹はへこんで行きます。が、へこんで行くと言うよりは、上に押し上げていくと言った方が正しいと思います。
ベルカントで一番大事な事は、自分の身体を楽器に徹する事です。喉に力を入れたり、閉めたりして搾り出すのではなく、下腹(横隔膜)が空気を楽器である声帯に送り込んで、自然と鳴らし、顔、頭、胸などを共鳴させるのです。
下腹は横隔膜を押し上げる為に徐々に身体の斜め上、中方向にへこんで行きます。限界まで来たら、力を抜いて下腹を戻します。この繰り返しが歌のワンフレーズです。上る音の時は下腹を引いて、音が降りてくる時に下腹を戻してしまう人が多いのですが、これだと下降の声は、喉が直接出す喉声になってしまいます。さらに悪い事に、下腹はもう膨らんでいるのですから、ヴレスが腹で(横隔膜で)出来なくなり、胸でしてしまうという悪循環になってしまいます。歌のワンフレーズは身体の動きもワンサイクルです。
さて、下腹を上げていくのですから、上体も上がっていってしまいます。それを上げないように下に引っ張り、上体を元の位置に保とうとする役割が腰です。これがバランスを取るという事です。見た目には何も身体は動いていません。下腹のみです。これがベルカント唱法の支えとなります。
しかし、これは正統派ベルカント唱法の発声法で、イタリアで勉強して、自分はベルカント唱法で歌っていると自負している人でも、違う発声法の方がほとんどです。とにかく腹に力を入れて、そこを支えとしている人には、全く分からないと思います。
普段、リラックスして呼吸している時の下腹と同じ動きを、声を出す時もするのです。
私も最初イタリアでマエストロに、1から発声を変えられた特は、まったくできませんでした。1週間に2回レッスンに通って3年かかりました。もちろんそれで完成したわけではありません。死ぬまで修行するでしょう。
残念ながら、あの文章を読んで理解できない人はやはりベルカント唱法ではない発声法でしているので、意味が良く分からないのです。
とにかく既成概念が邪魔をしています。「声を出す事はこういう事だ。」と言う考えを1度捨ててみて下さい。自ずとあの文章の意味が見えてきます。

私は今クラブ活動で合唱部をしています。この前、定期演奏会でミュージカル、ミスサイゴンをやりました。主役をとった子は群を抜いて上手いのですが、そのわけは・・・
1.こえがよくまえに飛ぶ
2.一言一言はっきりいっているのにポジション上がらない
だとおもうんです。どうしたらこのようになれるんでしょうか?(中学生・女子・14歳)

質問コーナのどこかに書いたと思いますが、声は自分によく聞こえるように一生懸命出すと、思ったほど外に出ず、人にはよく聞こえないものです。もちろんホールでも前に響かないのです。
大きな声でなくとも、息に乗った、開放された声は、小さな声でもホールでよく響くのです。良い声と言うのは、出してる本人には、意外とはっきりと聞えないものです
ポジションが上がらないのは、深いところで発音しているからでしょう。
逆に喉が上がって行ってしまって深い響にならないのは、顎が閉っていて、のどだけで声を出そうとするからです。外から見ると良く分かりますが、首が伸びて前に出てしまうと完全に喉が上がってしまいます。
母音の「ア、エ、イ、オ、ウ」を顎を良く開けて、鼻腔で発音するようにして下さい。
それと合唱をする人は周りの人の声に負けないように、また自分の声を聞こうとしてがんばって声を出す人がいますが、それが声を遠くに飛ばさなくする原因です。
言葉でのアドバイスだけでは、なかなか分かりにくいと思いますが、ベルカントの解説を良く読んで、横隔膜をよく使い、無理のない発声で歌ってみて下さい。

私は高校で卒業論文の作成に向け、色々な資料を探しています。テーマは『素晴らしいオペラ歌手は、体格がよいと言えるのではないか?』です。もしこのことについて、なにかあれば教えていただきたくメールさせていただきました。

『素晴らしいオペラ歌手は、体格がよいと言えるのではないか?』
これは、イエスとも言え、ノウとも言えます。オペラ歌手、声楽家は自分の身体が楽器です。
例えば、ピアノや弦楽器、管楽器などの楽器は大きい方が、豊かな音が出ますね。同じように、人間も例外はありますが、大きい人の方が豊かな声がでます。しかし、それは音が大きいか小さいかという比較だけです。
それでは、弦楽器で見てみますと、ヴァイオリンはヴィオラより小さいですけど、ヴィオラより素晴らしくないですか?またヴィオラはコントラバスより小さいですが、コントラバスより、悪いですか?そんな事はありませんね。音色や音域が違うのですね。
人間もやはり、同じように身体が大きい方が、声が低く、小さい方が高くなっています。このような違いがあって、その人なりの体格を充分、活かせているかどうかが問題なのです。体格がよくても、身体の使い方が悪かったり、使い切れていなかったりしたら、一回り小さい人より良い声が出ない場合もあります。また、オペラ歌手は色々な役を演じなければなりません。体格の良い人ばかりでは、オペラはできません。子供の役も大人がやりますし、可愛い娘や息子など、親より大きな人がやったら変ですよね。
このように、体格が良いほど楽器として大きいので、豊かな音が出ますが、小さい人でも効率の良い身体の使い方で、素晴らしい声が出ます。また、これがベルカントの醍醐味でもあります。

子ども(女子:10歳です)が、すでにオペラ歌手になりたいと公言しています。
私は素人で分からないのですが、声楽のレッスンはおよそ何歳頃から始めるのがよいのでしょうか。あまり早くから始めても声帯を痛めてしまうということを聞いたことがあるのですが。

それは頼もしいですね。いつから始めたらいいかという規制は何もありません。「声楽」と言うと非常に堅いイメージがありますが、単純に「うた」ですから幼稚園生でも構わないわけです。その年齢にあったテキストで、無理のない正しい発声で、適切な指導者のもとでレッスンを受ければ、声帯を痛めることもありません。ちなみに「ウィーン少年合唱団」は10歳から入団できると、記憶していますが、日本人でも10歳なら早すぎる事はありません。
「オペラ歌手」になりたいというと、歌だけうたってればいいと誤解される方が多いのですが、まず「オペラ」は総合芸術で音楽、美術、衣裳、照明、踊り、などの全てが結集された作品です。そこで主役に位置する歌い手は、歌だけうたえてもだめなのです。その役を演じる為には、歴史的背景や人物の性格分析、また原語ですから言語理解力や舞台の基礎知識など、挙げたらきりがないほどの才能と知識が必要です。
ですから、小さい時から始めても、なんら支障はありませんが、それだけに片寄らず、学校の勉強やその他のものにも興味を持ってください。そうすれば将来、素晴らしいオペラ歌手になれるでしょう。

秋山さんこんにちは。3月の「アンドレア・シェニエ」でご一緒させていただきます。
ベルカント唱法を習得すべく日々精進しておりますが、まだパッサージョがつかめていません。いろんな方法論を探しながらパッサージョとはなんぞやと思案しているのですが、感覚がつかめないんです。パッサージョしているときと、そうでないとき(アペルト)のときでは自分の感覚はどのように違いますか?また自分の耳にはどんな風に聴こえている状態なのでしょうか?

「アンドレア・シェニエ」のジェラールでは私もパッサッジョで苦しんでます。ジェラールはバリトンの中でも重い声の役なので、パッサッジョが低めに書かれているんです。私の声はパッサッジョが高めなので、「セヴィリア」のフィガロとか「トロヴァトーレ」のルーナなどの位置がぴったりくるんです。
イタリアオペラの作曲家達は、その当時の実際の歌手を想定して作品を書いています。そのお目当ての歌手のパッサッジョが低めだと、このような曲になるんです。その曲をパッサジョの位置が違う歌手が歌うと、結構無理が来ます。なにしろアクートとして書かれた音がその本人のパッサッジョになってしまうからです。これがレパートリを守るということです。
さて、何が言いたいかといいますと、バリトンだからこの音でパッサーレしなくてはとか、自分はバリトンだから、この音がパッサッジョだ、とかという既成概念があるとうまく行かないのです。パッサッジョ・アクートの位置は個人個人違います。それを自分のパッサジョはこの音だからと信じて、そこを一生懸命なんとかしようと努力しても、実際、位置が違っていたらどうする事も出来ません。まず、自分の本当のパッサッジョの位置を、先生に見つけてもらわなければなりません。残念ながら自分では見付けられません。
licht君は多分私と同じように、一般のバリトンよりパッサッジョの位置が高そうな気がします。
「パッサージョしているときと、そうでないとき(アペルト)のときでは自分の感覚はどのように違いますか?」まず、感覚ですが、パッサーレしていない時は「良く声が出てるな~!」とか「まだ上の音が出そうだ!」という感じですね。反対に良くパッサーレしている時は「あれ~?声あんまり出てないかな~?」とか「もうこれ以上、上の音に昇れそうにないや~」「何だか身体が苦しいぞ~」と言うような感じを持ちます。
逆のように思われがちですが、これが良くパッサーレしている時の感覚です。要するに確かな手ごたえがない、宙ぶらりんのような感覚です。最初は、全然声を出している感覚がなくなり、非常に頼りがいのない、恐い感覚におちいります。でもこれは自分にだけ感じる事で、聞いている人には今までと何も変わってなく聞えます。
「また自分の耳にはどんな風に聴こえている状態なのでしょうか?」これも同じように、それまでの音より、自分の耳にはあまり聞えなくなるとか、くぐもって聞えるとかの感覚になります。欠伸をして軟口蓋が上に引っ張られると、周囲の音が少し小さくなるのと同じ現象です。
ここで重要なのは、先にも書きましたが、自分の耳にだけこう聞えるのです。お客には何も変わって聞えません。お客に変わったことが分かってしまうのは、パッサーレしているのではないのです。録音を撮って自分の声を聴いて、変わったと自分に分っても違います。
なかなか難しい事なので歌手生活の生涯を掛けて追求していくことです。

私は声楽科を卒業して、現在は働きながら、レッスンに月一回ほど通いながら練習しています。私の悩みは、本番で声が震え息が異常に短くなることです。始まりは大学3年ぐらいからで、年をとるごとにどんどんひどくなってきています。本番になると必ず緊張して声が震えてしまい、音程も悪くなり、聞くに絶えないほどひどい演奏になってしまいます。一人で練習している時はかなり安定した声が出ているし、息も長いほうではないですが、ちゃんと続いているのです。試験やオーディションでよく言われることは、「支えがない。イタリア古典歌曲などを練習するように。」です。
毎日毎日練習しているのに、本番に役立つ支えは一向に身に付きません。それどころか、この緊張からくる声の震えは年々ひどくなっているのです。
どうか、ベルカント唱法を身に着ける(舞台でも同じコンディションでいることができる)練習方法を教えてください。

あなたの悩みは非常に良く分ります。なぜなら私も数年前までは(イタリアに留学する前)あなたと同じでした。
普段、自分で練習している時は、ちゃんと高音も出るし、息も続くのですが、本番や試験になるといつもの半分も実力を出せませんでした。いつも友人などには「今日は調子悪かった?」と言われる始末でした。
後に分った事ですが、練習している狭い部屋では、自分の声が良く聞こえて安心して歌えるのです。それが広い舞台などに出て行くと、自分の声は聞えないし、何を支えにして声を出していいかまったく分らなくなってしまうのです。それが原因で最後には玉砕してしまっていたのです。
ここで問題なのは、自分の声を良く聞こうとして歌っているところです。ベルカント唱法は自分の声が良く聞こえるポジションでは歌わないのです。それと支えは力ではなくバランスですので、緊張しても(当然、舞台では誰もが緊張します)出来なくなることがないのです。
声は精神面が大きく左右しますので、私がベルカント唱法をイタリアで習って大きな収穫は、舞台に出たときに、具体的に身体をこうすれば「絶対声は出る!」と信じて歌えるようになった事です。信じるものができて、非常に大きな心の支えになり、リラックスして歌えるようになったのです。
あなたの問題点はまず、「信じられる発声法がない事。」どこかにも書きましたが、実際出ている声と、人に聞えてる声は違うのに「自分の声を聞きすぎる事。」月にたった1回レッスンに通って、「毎日、一人で練習している事。」これはベルカント唱法のページに理由が書いてあります。あなたの場合は一人で練習すればするほど、悪い方向に行ってしまうでしょう。月に1回程度レッスンに通うのは、我々の世界では「顔つなぎレッスン」と言って何の進歩も望めません。
最後に「ベルカント唱法を身に着ける練習方法」は一人では難しいでしょう。実際に正しい方向に向いているか、ベルカントが解る先生に聴いてもらわないと、悪循環の繰り返しです。

質問じゃないのですが、私はアマチュア合唱をしているのですが、がなり声しかでなくて全然自信がなくて、歌うこと自体をを半ば諦めかけていたのですが、こちらのHPのベルカントとはを読んで、「これで歌える!、救われた!」と思いました。
「今なら、ベルカントだったらマスターできる!」と勘違いしてしまうほどに自信がつきました。本当に感謝しています。有り難うございます。ベルカント唱法は私の宝石です。たばこすってますけど。。。

どうもありがとう!
お役に立ったようで、大変嬉しく思います。
実はベルカント唱法は、歌を少しでもかじった事のある人には、結構難しく感じるものなのです。反対に、全く歌った事のない人が始めると、すんなり行くようです。なぜなら、大抵は、横隔膜を堅くふんばって支えて発声をするようにと、教わっている人が多いからなのです。ベルカントは普段と同じ横隔膜の使い方をするので、何にも知らない人の方が、自然と出来てしまうみたいです。
合唱を歌っている方たちの危険な点は、前にも書きましたが、周りの人の声に負けないように、また自分の声を聞こうとしてがんばって声を出す人がいます。そしていつしか、自分も同じ事をするようになるのです。それががなり声になる原因です。
もし、全員がベルカントで歌えれば、近くではそれほど大きな声になる事はありませんので、がなる必要もなくなってきます。
また、タバコは吸わないに越した事はないのですが、ベルカントが出来れば風邪をひいたりなどして、多少のどの調子が悪くても、ある一定の水準の声は保てるようになります。合唱の声の落とし穴に、はまらない様に頑張ってください!

はじめまして。教育学部に通う大学3年です。
私は今年度から初めて声楽の授業をとっているのですが、ブレスの仕方が良く分かりません。そこでは鼻から息を吸うよういわれています。しかし私は管楽器をやっているため、口から息を吸う腹式呼吸になれています。そのため鼻からの呼吸だと息が入ってこなくなり息切れしてしまいます。また鼻からの呼吸をして歌うと、のどががらがらになってしまうのです。これは方法が悪いからなのでしょうか。またベルカント唱法では鼻からの呼吸でなければならないのでしょうか。教えていただければ幸いです。よろしくお願いします。

呼吸は、声楽を志し、また職業にする者にとって永遠の課題です。まず、あなたの大学のように、ほとんどの声楽教師は「鼻から息を吸いなさい」と教えます。しかし、ベルカント唱法では歌う前に、鼻からも口からも息をしません!
ちょっと大げさに言いましたが、声を出す直前にブレスを取るのがごく普通の概念ですね。「はい、深く吸って!」と教えられるのがほとんどです。ベルカントは自然な呼吸、自然な身体のバランスで歌う方法なので、普段と、そう違う事はしないのです。
例えば「おはよう!」「こんにちは!」などを言う時にわざわざ息を吸い込んでからしゃべりますか?しませんね。健康な人が普段の生活で、呼吸を意識してしてますか?特にリラックスしている時には誰でもが腹式呼吸になっています。そんな時、鼻から吸おうか?口から吸おうか?と考えますか?息をしてる事など忘れてますね。
これがベルカント唱法の腹式呼吸法なのです。言い換えれば、「横隔膜式呼吸」と名づけたいぐらいです。
歌う直前に息をしないというのは、前奏などで、息を止めている訳ではなく、自然に呼吸をして待っているはずなので、肺には80%ぐらいの空気が出たり入ったりしています。その状態の時、さらに息をしてしまうと、肺には100%空気が入ってしまいます。
誰もが、たくさん息があればたくさん使えるはずだと考えます。が、人間の身体に100%というのは苦しくて、次の行動に出にくくなってしまうのです。
例えば胃に食べ物をたくさん詰め込んだら苦しくて動けません。「八文目」と言う言葉があるくらいですから、入りすぎは、出しにくいという状況になってしまい、最後のフレーズまで息が続かなくなってしまうのです。「私は息が短くて・・」という人は実は吸い過ぎの場合が多いのです。
まとめますと、ベルカント唱法では、息を吸うという行為から始まるのではなく、吐くところから始まります。フレーズを歌い終わり、息がなくなったら横隔膜の力を抜き、下がると勝手に鼻や口から空気が入ってきます。決して強制呼吸をしないのです。鼻からだけ、口からだけと決めるのではないのです。普段と同じように何にも意識せずに呼吸をするのがベルカントが目指すところです。

音楽大学受験についてのQ&A